最新知見 花粉症への効果KNOWLEDGE

食べる菌体験のススメ

POINT

花粉症(アレルギー)ケア
「3つの対策」

「花粉を体に入れない」・「体質を改善する」・「薬で症状を抑え込む」

花粉症(アレルギー)は、病原菌などを排除する免疫システムのエラー(過剰反応)で発症します。対策は大きく3つに分けられます。

発症メカニズム

1. 花粉を浴びる1. 花粉を浴びる
2. 免疫システムのエラーが起きる (過剰なIgE抗体ができる)2. 免疫システムのエラーが起きる (過剰なIgE抗体ができる)
3. 過剰にヒスタミンが放出され、花粉症(アレルギー)を発症3. 過剰にヒスタミンが放出され、花粉症(アレルギー)を発症
くしゃみ・目のかゆみなどの花粉症の症状

1.「花粉を浴びる」対策

花粉を体に入れない

マスクやメガネなどを積極的に活用し、帰宅時には服に付いた花粉を外で払います。ウールは帯電しやすく、綿素材に比べて10倍も花粉が付着するというデータもあるので、服選びでは素材にも注意しましょう。

服の素材で花粉の付着量は異なる

2.「免疫システムのエラー」対策

体質を改善する
(免疫システムのエラーを予防・対策)

免疫システムのエラー予防には、普段の生活における対策が大切です。例えば、「適度に運動をする」「様々な食べ物を体内に取り込む」など、体に適度な刺激を与えることが大切です。特に、免疫システムを司る免疫細胞は消化器官にあるため、免疫細胞に直接働きかけられる「食べ物」が重要といわれています。

3.「過剰なヒスタミン放出」対策

薬で症状を抑え込む
(免疫システムのエラーが起きた場合)

花粉症(アレルギー)の症状は、「ヒスタミン」と呼ばれる生理活性を高める物質の放出により起きるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれる薬が効果的とされています。ただ、抗ヒスタミン薬の役目はアレルギー症状を“治す”のではなく、あくまでも一時的に鼻や目の症状を“抑える”ものです。また近年では、舌下療法が注目されていますが、長期的な治療が必要です。

体質改善で重要なのは、菌との接触

多くの研究者が、「菌との接触」が花粉症(アレルギー)の発症率を下げることを証明

生活環境の変化は、免疫システムに大きな影響を与えます。農村と都会の生活環境の違いを利用した統計研究、兄弟・姉妹など毎日の生活で触れ合う人数の違いを利用した統計研究等、「菌との接触」と花粉症(アレルギー)の関係について、これまでいくつもの研究がされてきました。これらの研究は、農村に暮らしたり、兄弟・姉妹の多い生活をする人の方が「菌との接触」が多く、花粉症やアトピー性皮膚炎(アレルギー)にかかりにくいことを証明しています。

専門家は、「多様な菌と接触することで、病原菌とアレルギー物質を正しく見分けられるようになり、免疫システムが正しく働くようになる」と推察しており、この考え方は「衛生仮説」と呼ばれています。現代の生活環境の変化にあてはめてみるとどうでしょうか。花粉症をはじめとするアレルギー疾患が、1960年代以降の特に先進国・都市部で生活する方に増加しています。これは、清潔すぎる生活環境が一因となり、免疫システムのエラーを増やしていると考えられます。ここでは、いくつかの研究結果を紹介します。

農村における子どもの花粉症は、都市部の1/10以下

ミュンヘン大学のエリカ・フォン・ムティウス教授によると、アメリカの農村部で農耕・牧畜を主体とした自給自足生活を送っている子ども(アーミッシュ)は、花粉やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の有病率が都市部に居住する子どもに比べて10分の1程度しかいないという疫学調査データを発表しました。

アーミッシュと都会の子どものアレルギー発症率アーミッシュと都会の子どものアレルギー発症率

出典:Mark Holbreich et al,(2012) J ALLERGY CLIN IMMUNOL

農家の子どもにはアトピー性皮膚炎が少ない

2011年に、農家と農家でない家の1歳~2歳の子どもを比較した調査結果が発表され、農家の子どものアトピー性皮膚炎の累積有病率は、非農家の子どもよりも低いことが明らかになりました。

農家と非農家の子どものアトピー性皮膚炎の有病率農家と非農家の子どものアトピー性皮膚炎の有病率

出典:Caroline Roduit et al,(2011) J ALLERGY CLIN IMMUNOL

兄弟・姉妹など生活で触れ合う人数の多さと、アレルギーの関係

イギリスのデヴィッド・ストラカン博士は1953年3月に生まれたイギリス人1万7415名を対象に、それぞれ花粉症(アレルギー)の発症と関連する環境要因を調査しました。それによると、兄弟・姉妹の数が多い人ほど、花粉症などアレルギー疾患を持つ人の割合が小さいこと、また兄弟・姉妹の中では長子の方がアレルギーの有病率が高いことが明らかになりました。

食べ物から多様な菌を取り込む
「菌体験」を

免疫システムを正しく働かせるためには、多様な菌を口から摂取すること

免疫細胞が多様な細菌やウイルスなどに触れていると、免疫システムは正しく働くようになります。免疫細胞は、主に小腸に集まっています。そのため、口から多様な細菌やウイルスを摂取して、腸へと取り込むことが、免疫細胞を活性化する最適な方法といえます。

小腸は免疫のカギを握る

口から胃や小腸、大腸といった消化器官は、食物や空気と直接的に接します。そのため、皮膚と同様に、細菌やウイルスなどの侵入経路なのです。特に小腸は免疫細胞の7割が存在するともいわれる感染防御のいわば最前線。小腸の粘膜ではマクロファージやヘルパーT細胞、B細胞などの免疫細胞が活動しています。

多様な種類の菌を腸に取り込めるよう食事を変えていく

免疫細胞を活性化するためには、多様な菌を消化器官に取り込み、消化器官にある免疫細胞に直接働きかけることが重要になります。

私たちは、今ほど清潔でなかった時代、ほこりや土など、またそれらに触れた自分の手などを介して、意識せずとも多様な菌を口から取り込んでいました。しかし、都市化によって地面はアスファルトに覆われ、手洗いの習慣がしっかりと定着した現代では、暮らしの中で自然に多様な菌を取り込むことが難しくなりました。それが、昨今の花粉症(アレルギー)の増加につながっていると考えられています。

そこで、都市化と衛生化が進んだ現代人の花粉症(アレルギー)対策のキーワードになるのが、食事からの菌体験です。多様な種類の菌を、腸などの消化器官に取り込むことを意識した食事方法に変えていくことが、花粉症(アレルギー)になりにくい体質作りにつながります。