ぶどうからワイン、お米から日本酒という具合に、その土地の食材からつくられるのがお酒です。そして、お酒が酢酸菌によって発酵するとお酢になります。つまりお酢はお酒同様、地域の食文化に深く根差したものなのです。
世界中の地域がそれぞれに持っている食文化と、密接に関係しているお酢。例えばフランスなどワインがよく飲まれている国々ではワインビネガー(ぶどう)、フィリピンでは、パイナップルやココナッツのお酢がつくられています。
お酒を保存しておくと自然に酸味が出てお酢になることは昔から知られていました。紀元前5000年ころの古代バビロニア時代では、干しぶどうやナツメヤシを利用してお酢をつくっていたという記録が残っています。そして、お酢が健康に良いということも、早くから知られていました。ギリシアの医学者ヒポクラテスは「病み上がりにはお酢を飲むのが良い」と説き、中国の唐王朝時代に書かれた『本草拾遺』には、お酢を飲むことで体に溜まった物の“めぐり”を良くすると書かれています。
日本に中国からお酢の製造法が伝わったのは奈良時代です。壺で保存したお酒を自然発酵させるという手がかかるもので、貴族に重用される希少な調味料として利用されていました。時を経て、お酒の入ったタンク内に空気を送りこみながらかき混ぜて発酵を早める大量生産製法が確立したことで、お酢は庶民にとって身近な調味料となりました。
調味料としての価値だけでなく、「健康のためにも良い」と紀元前からいわれてきたお酢。各方面での研究が進んだ今、その科学的根拠も明らかになってきています。