2026.04.01酢酸菌のある暮らし

春前に取り入れたい、「酢酸菌をとる」という食習慣。いつもの食事で気軽に楽しむためのヒントとは?

三寒四温のこの時期、なんとなく体が重い、目や鼻がムズムズするといった、言葉にならない「ゆらぎ」を感じることはありませんか?

身の縮こまるような冬の寒さから、暖かな日差しの春へ。けれど体がなかなかついていかない、そんな季節の変わり目には、環境の変化なども重なり、思いのほかつらい不調を感じることがあります。

そんなときに、私たちの心強い味方になってくれるのが、古くから受け継がれた暮らしと食べものの知恵です。

発酵食品への関心が高まるなかで、いま改めて注目されているのが、「にごり酢」酢づくりの過程で作用する酢酸菌をろ過せずに残した、にごりのあるお酢のことです。

もともとお酢は、古くからこのような濁った状態で口にされることが珍しくありませんでした。ところが近代以降、均一で透明な酢が好まれるようになり、店頭に並ぶ酢の多くはろ過されたものへと変わっていきます。

それが近年、発酵や腸内環境への関心の高まりとともに、酢酸菌を含む「にごり酢」の価値が見直されるようになってきました。

酢酸菌のある暮らし

 もともとお酢には、日々の健康をサポートするうえで、さまざまな働きがあることが知られています。その力の源ともいえるのが、発酵の主役である酢酸菌です。伝統製法でつくられた「にごり酢」は、それをあえて残すことで、酢酸菌の風味や栄養成分をそのままに味わうことができます。

 たとえば春先にかけて悩ましい花粉症は、体を守るはずの免疫が過剰に反応して起こるアレルギーの一つといわれています。

近年は、腸内環境や体のバランスとの関係にも関心が寄せられ、食べ物からさまざまな菌を取り入れることの重要性が広く認められています。「にごり酢」は、そんな発酵食品のなかでも健康面から特に注目されており、最近の研究では、「にごり酢」のにごりの主成分である酢酸菌について、花粉症シーズンの鼻や目の不快感の軽減に関する報告も見られるようになってきました。実際、酢づくりにたずさわる蔵元の皆さんのなかには、花粉症の症状が出にくいと感じている方も多いといいます。

さらに、酢酸菌は、これまでよく知られてきた乳酸菌や納豆菌などの他の発酵菌と一緒にとることで、相乗効果が生まれ、免疫細胞の働きをより強力にサポートするという指摘もあります。

ですから、酢酸菌を豊富に含む「にごり酢」を日々の食生活に上手に取り入れることで、ゆらぎがちな季節のコンディションを底上げする心強い味方となってくれるはずです。

酢酸菌 にごり酢で「健康を贈る」

日本橋高島屋の催事会場(2026年2月末に終了)

2026年2月16日~28日、日本橋高島屋で、この「にごり酢」を扱った一大フェアが開催されました。

題して、「全国の蔵元が守り継ぐ 酢酸菌にごり酢で『健康を贈る』」

会場では、全国選りすぐりの各蔵元の「にごり酢」を試飲・購入できるほか、高島屋に店舗をかまえる13の人気惣菜ブランドが「にごり酢」を使用した春の新メニューを販売するなど、活気あふれる展開となりました。

このフェア開催の背景には、常にお客様のニーズを第一に考え、日々の食卓に「喜び」と「健やかさ」を届けてきた高島屋の真摯な視点があります。顧客が今、何を求め、どのような食生活を理想としているのか。最近の発酵食品への高い関心も受け、その問いに対する一つの答えとなったのが、伝統的な知恵と現代の健康意識をつなぐ「酢酸菌 にごり酢」でした。

今、幅広い世代から支持を集めつつあるこうした「にごり酢」は、そのまま水などで割って飲むだけでなく、もちろんさまざまな料理にも使うことができます。

使用法も、さっと振りかけるだけの手軽なものから、下味として、あるいは味の決め手になるものまでさまざまです。

酢酸菌を含む「にごり酢」には、単純な酸っぱさだけではない、まろやかさやしっかりとした旨味、複雑な味わいがあります。それでいて、酢という食品が持つポテンシャルをいかんなく発揮してくれるため、素材を引き立てます。あるときには主役に、あるときには料理全体の味わいを底上げする名脇役として、自在に表情を変え、私たちの食卓に奥行きを与えてくれるのです。

たとえば、人気惣菜ブランド「菊乃井」の「5種の海藻と木耳椎茸の酢の物」は、海藻やきのこの歯ざわりと旨味がきわ立ち、控えめな味つけながら満足感のある味わいが楽しめました。また、同じく「菊乃井」の、尾道造酢の「橙果皮酢」を使った「大根とかぶのゆずなます」は、橙(だいだい)から作られたフルーティーな風味がさりげなく活かされており、原材料によってもさまざまな風味が楽しめる「にごり酢」の個性を感じられる一品でした。

その他、各ブランドからも趣向を凝らした季節メニューが登場し、このお酢の多彩な楽しみ方を余すところなく紹介していました。さらに、会場内の各店舗には、酢ムリエでもある五島敏之マネージャーによる「にごり酢」と商品とのマリアージュの提案が掲げられ、各惣菜ブランドの個性に合わせた、プロならではの創意工夫が凝らされました。

「食の最前線」である百貨店の食料品フロアで、こうした「にごり酢」を扱う意欲的なイベントが開催されたことは、まさに「新しい食習慣」が本格的に根づき始めている確かなきざしのように見えます。

そして、こうしたプロの提案による「にごり酢」の使い方は、私たちの食生活にも非常に大きなヒントを与えてくれます。

酢酸菌 にごり酢で楽しむ「新しい食習慣」

酢酸菌を残したにごり酢

季節の変わり目の不安定な時期、心身の「ゆらぎ」を整えてくれる酢酸菌を、日常でどう楽しむか。先のフェアでは、高島屋が提案するプロならではの視点に、私たちがすぐに真似できるヒントがたくさん詰まっていました。

例えば、下味に「にごり酢」を使うことで揚げ物でも後味が驚くほどふくよかで軽やかになる提案や、塩気のきいたバタールに合わせて小麦粉の甘みを引き立てる手法などは、素材や調理法を知り尽くしたプロならではの工夫といえるでしょう。

 こうした提案をヒントに、実際に食卓で試してみると、「にごり酢」の使い勝手のよさにあらためて驚かされました。熱々の豚汁にひと垂らしすれば、このお酢特有の旨味と余韻が汁物のコクを深め、旬を迎える季節野菜の料理に合わせれば、こっくりとしたまろやかな酸味が料理全体の味わいを見事に底上げしてくれます。

 「にごり酢」は、心地よい酸味がありながら、素材との調和力が非常に高いため、素材のクセを上手に抑えつつ、持ち味はしっかりと引き立てます。他の具材が持つ甘み、旨味、香り、風味をぞんぶんに引き出し、調和のとれた味わいへと導いてくれるのです。

しかも、「にごり酢」は、蔵元によっても原材料によっても見た目や味わいがまるで違うという楽しみもあります同じ「にごり酢」でありながら、米、酒粕、りんご、柿、柑橘と、風味に豊かなバリエーションがあり、さらに製法や熟成期間によっても味わいは異なります

「どのにごり酢を、どの料理に合わせるか」。プロが示したその自由で豊かな発想をヒントに、魅力あふれる「にごり酢」を日々の食事に気軽に取り入れるだけで、いつもの献立はもっと健やかに、もっと楽しいものへと変わります。

 伝統が守り抜いてきたその一滴を、自分や家族への「健やかな贈り物」として。まずは今日の一皿に、「にごり酢」をひと垂らしすることから始めてみませんか。

そのまろやかで奥深い酸味と旨味が、いつもの食卓をちょっと特別にしてくれるはずです。

庭乃 桃さん

料理・食文化研究家/文筆家

ひとつの食材、ひとつの料理の向こうにある、歴史や文化、作り手の想い。 そうしたさまざまな「食の風景」を、専門知をふまえながら、日々の食卓に届くかたちで伝えている。 著書に『おいしく世界史』(柏書房)。https://niwamomo.com/