2024.11.05酢酸菌コラム

お酢も発酵食品。他の発酵菌にはない、酢酸菌に含まれる独自のパワーとは?

お酢は酢酸菌でアルコールが発酵することでつくられます。つまり、お酢も発酵食品のひとつ。ここでは発酵の意味や、お酢に含まれる酢酸菌の効果について、東京農業大学の前橋健二先生にお話を伺いました。

前橋健二さん

東京農業大学 応用生物科学部醸造科学科 教授

日本の調味料研究の第一人者。調味食品科学研究室に所属し、発酵における微生物と成分変化、発酵調味料、味の解析や味覚のしくみなど「発酵」と「味」について研究している。

発酵食品は体に良いと聞きますが、そもそも「発酵」とは何ですか?

「発酵」とは微生物の働きにより、食物が有益に変化することです。発酵を促す微生物には、味噌や醤油に欠かせないカビの一種である麹菌、酒の醸造やパンづくりに必要な酵母、そしてヨーグルトや納豆、漬け物などさまざまな発酵食品をつくる発酵菌(細菌)があります。食物は発酵することにより、保存性・味・香り・栄養価が向上します。

お酢は、古くから世界中の食文化を支えてきた発酵食品のひとつで、酢の場合は酢酸菌の発酵によりアルコールが変化し、酢となります。酢の酸味成分である酢酸には内蔵脂肪の減少や血糖値上昇の抑制、コレステロールの低下などの健康効果があります。さらに近年では、酢の新たな健康効果が注目されています。それは、免疫力増進。酢に含まれる成分(酢酸)ではなく〝酢酸菌そのもの〟が、免疫細胞を活性化することがわかったのです。

「ヨーグルト(乳酸菌)や納豆(納豆菌)で免疫力を上げる」とはよく聞きますね。 酢酸菌ならではの特徴があるのですか?

免疫細胞を活性化することは、ほかの発酵菌(乳酸菌や納豆菌など)でも報告されています。しかし、酢酸菌は、ほかの発酵菌以上の活性化を免疫細胞に促すのが特徴です。酢酸菌は「グラム陰性菌」という種類に分類され、その代表的な菌は、なんと大腸菌やサルモネラ菌といった有害な菌(外敵)。グラム陰性菌には細胞壁の外側にLPSという物質があり、免疫細胞であるマクロファージがLPSをキャッチすることで活性化します。つまり、外敵ではない酢酸菌のLPSでも活性化するというところがポイント。マクロファージは敵の情報を酢酸菌から入手することで、いつでも病原菌やウイルスを攻撃する準備を整えることができるといえるでしょう。

酢酸菌には独自の免疫活性力があるのですね。酢酸菌はどのような食品に含まれているのですか?

ナタデココ、カスピ海ヨーグルト・ケフィアヨーグルト、コンブチャ(紅茶キノコ)、そして「にごり酢」に含まれています。 日常的に摂取するのにおすすめなのが「にごり酢」です。食事に大さじ1杯分のにごり酢が含まれていると、免疫の活性に効果があると言われています。調味料やドレッシングにすれば手軽に摂取できるでしょう。

注意してほしいのは、実は一般的な酢(透明な酢)には、酢酸菌がほとんど入っていないこと。製造過程で酢酸菌を濾過してしまっているのです。伝統的な製法でつくられた「にごり酢」であれば、濾過されていないので、酢酸菌がたっぷりと入っています。

にごり酢というと聞き慣れないかもしれませんが、最近ではあえて濾過せず、酢酸菌を残した伝統製法のにごり酢をつくる蔵元が全国で増えています。各地の原料や製法により、味わいに変化が生まれることも、にごり酢の魅力のひとつ。ぜひ、にごり酢を食し、免疫活性化を向上させる「酢酸菌ライフ」を実践してはいかがでしょうか。