酢酸菌は、免疫細胞に備わっている免疫を活性化させるスイッチである「TLR2」と「TLR4」の両方を押せることが分かっています。特に、酢酸菌が「TLR4」を押せる希少な発酵食品の菌であることが研究者の注目を集めています。「TLR4」は、免疫力を上げるといわれる乳酸菌や納豆菌でも押すことはできません。また、菌との接触が少ない清潔な生活環境に生きる私たちは「TLR4」を押せる菌と接触する機会がなかなかありません。
近年、酢酸菌が「TLR2(乳酸菌や納豆菌などが押す免疫スイッチ)」と「TLR4」の2つのスイッチを押すことで、免疫バランスを整え、免疫の誤作動や過剰反応を抑制し、花粉症などのアレルギー症状を抑えるということが明らかになりました。このことから、酢酸菌を取り入れることで、アレルギーに強い体質作りが可能と考えられます。
※免疫を活性化するスイッチTLRは、現在1-11まで発見されており、各TLRによって、感知する成分が異なる。
最新の研究において、酢酸菌は免疫の司令塔である「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化させることが明らかになりました。一般的な発酵菌は一部の免疫細胞のみを活性化しますが、酢酸菌は免疫の司令塔であるpDCを直接活性化することができます。pDCから指令が出されると、病原体やウイルスのような外敵がいないかパトロールをするIFN-α(インターフェロン・アルファ)の分泌が活性化します。さらに、外敵の侵入を阻止するIgA(免疫グロブリンA抗体)や分泌型IgA抗体の産生が促進されるほか、外敵と戦うNK細胞(ナチュラルキラー細胞)も活性化します。また、アレルギー疾患などを引き起こす“免疫の過剰反応”にブレーキをかけるT細胞の機能も向上します。そうすることで、全身の免疫機能の維持につながるのです。
実際に、酢酸菌を摂取することで、風邪様症状が低減したという試験結果もあります。摂取期間中、以下の風邪の代表的な症状を記録した結果、酢酸菌を摂取することで、各症状を低減することが分かりました。
<試験概要>
目的:酢酸菌の摂取が樹状細胞(pDC)活性に及ぼす影響確認
試験食品:プラセボ、酢酸菌GK-1(150億個/日)
被験解析対象者:風邪にかかりやすい(事前アンケートによる)日本人男女98名
方法:被験者を2群に分けて、プラセボと酢酸菌GK-1(150億個/日)を12週間摂取
試験デザイン:二重盲検無作為化プラセボ対照並行群間比較試験
酢酸菌と乳酸菌または納豆菌を併用することで、マクロファージの相乗的な活性化と、乳酸菌または納豆菌単体よりも、それぞれ倍以上の活性が確認されました。免疫細胞への働きかけ方が異なる酢酸菌と乳酸菌または納豆菌を組み合わせることで、抗アレルギー(花粉症予防)作用の相乗効果が期待できます。
<試験概要>
目的:免疫活性に対する相乗効果の確認
方法:J774.1細胞株に対し、酢酸菌GK-1および乳酸菌を添加
細胞株のIL-12p40産生量を指標に、マクロファージ活性化度を評価
出典:木村ら,酢酸菌 (Gluconacetobacter hansenii GK-1)のTLR4反応性と乳酸菌との抗アレルギー相乗効果, 2019を一部改編
<試験概要>
目的:免疫活性に対する相乗効果の確認
方法:RAW264.7細胞株に対し、酢酸菌GK-1および納豆菌を添加
マクロファージ活性化度として窒素産生量を評価
出典:酢酸菌研究会第11回研究集会、学会発表資料より
多様な菌の摂取は、現代人にとって大切なことです。酢酸菌も発酵食品に含まれる菌ですが、乳酸菌などの発酵菌とは異なるメカニズムで花粉症(アレルギー)に働き、予防効果への違いもあります。日頃から多様な菌の摂取を心掛けることで、免疫を整え、病気知らずの体を目指しましょう。